Special vol.5

sphere 3rdアルバム『syvyys』リリースインタヴュー


2011年7月13日にリリースされたsphereの『syvyys』。
待望の新作は、新たなメンバーを迎えてから初めての作品となっている。
シューゲイザーファンだけでなく、多くのロックファンに推薦したい名盤について
バンドの中心であり、異彩を放つカリスマギタリスト・五味誠さんにインタヴュー!


■ Rush、Led Zeppelin… ルーツは唯一無二の存在

R30 [Blu-ray] [Import]――イギリスに見に行くぐらいRushが好きなんですね。
だって日本に絶対来ないからね。昔、一度、武道館に来たけど、行かなかったんだよ。彼らは現役でしょ。昔の名前で違うメンバーでやってるバンドばっかりだし、リアルタイムの1番カッコイイときを見てると、それより劣化してるんだろうなって思うし。Rushは見てなかったから。でも行って、また行きたいと思った。
――ANTHEM創刊号の、“What's Your ANTHEM?”(人生に影響を与えた1曲について、紹介してもらう連載)にはLed Zeppelinを選ばれていましたが、他にどういったアーティストを聴いているんですか。
全部のアルバムを聴いているのは、Led ZeppelinとRushとSiouxsie&the Banshees、the Smiths、マイブラだけかな。しかもその5本の指に入るアーティストの中で、今でも現役なのはRushだけ。コンスタントに2年おきぐらいにアルバム出して、ツアーやってっていうのを、未だに現役でやってる人たちはそういないんだよ。それなのに、来ない。
――日本にあんまりファンがいないからでしょう(笑)。
うん。mixiコミュニティで2000人ぐらいしかいないんだよ(笑)。でも向こうでやったらスタジアムクラスなんだよ。
――5組に共通する部分って何ですか。
他にいないっていうこと。俺の中では唯一無二の存在はその5組だけなんだよね。
――色々な音楽が生まれて、聴いてくると、唯一無二の音楽がなくなってきて。
だから自分でやってるんだと思う。それになりたいと思って、ずっとやってるんだよ。
――新生sphereになって2年ぐらいになりますが、今のメンバーになってすぐに、アルバムの構想はあったんですか。
いつもアルバムありきでスタートするんだけど、今回はヴォーカルが代わるっていう前代未聞の出来事がありまして。だから珍しく、アルバムを想定して曲を書くっていう、いつものスタンスではなかったね。パートナーありきで曲を作るわけですよ、俺の場合。パートナーっていうのはヴォーカリストなんだけど。それが代わったから、一から構築していかなきゃという意識で、作っていく途中でアルバムの構想ができてきて、結実したという感じだった。
――最初の曲ができたときは、アルバムの構想がなかったということですか。
いや、曲を作るときには既にあったよ。このヴォーカリストはどういうサウンドがハマるのかなっていうところから始まったから、その時点では構想はなかった。何曲か作ってみて、感覚が掴めてきたら、アルバムの構想ができたという感じかな。
――曲はどういう風に作られたんですか。
1人で作りこんで、メンバーに渡す形だね。1st、2ndはメロディは中條有紀(前ヴォーカル)が作ったんだけど、今回はメロディも俺が作ってる。バックトラックもメロディも作って、ベースとドラムはこうやって弾いてって言って渡して…95%は俺が作ってるね。1曲だけいしばしさちこ(現ヴォーカル)がメロディを作ってる曲があるけど。
――それはどの曲ですか。
「The sunshine filtering through foliage」という1番最初にできた曲だね。それでチャレンジしてみて、俺が書くことになったわけ。彼女もそれを望んだんだよ。“詞を書くことに専念したい”ということで。
――私はラストの「Hope」が好きですね。
かなり評判がいいんだよね、この曲。
――この曲でPVも作られていますね。
そういえば、PVって作ってないなと気づいたんだよね。
――ZEPPET STORE以来の制作ですか。
HOODISで作ったね。HOODISは今、活動していないけど、タイミングが合えばまたやろうと思ってるよ。





■ アルバムタイトルに込められた思い 深い底には希望と光がある

――アルバムタイトルは『syvyys』。
フィンランド語で『シヴィス』と読みます。英語だと“abyss”になるんだけど、海の底の方だとか、哲学的な部分での思考の奥の方、深淵という意味ですね。
――なぜ、このタイトルになったのですか。
制作の8割ぐらいが終わった時点で、東日本大震災が起きて。自粛ムードで、電気を使ってはいけないという空気だったから、制作ができなくなってしまったんだよね。どうなるかもわからない状況で、東京にいる意味がなくなって、名古屋と大阪に旅に出たのね。それで名古屋のホテルで、デザイナーとメンバーとメールでやりとりしながら、曲順やアルバムタイトルについて考えていて思いついた。本当は津波の被害が大きかったから、海がテーマというのはあまりよくないんじゃないかという話も出たけど、1〜3曲目なんて海がテーマの曲だし、そういうイメージで作っていたわけで、震災があったからそのテーマを曲げようなんてあってはいけないと思ったんだよね。そんなこと言ったら、ピカソはナチスに空爆されたから“ゲルニカ”っていう絵を描いたわけじゃない?芸術って、それを受けてどう感じるかということで、自粛ムードなしに表現するのが表現者だから。深淵というのは、深い底に入っていけばいくほど、苦しみとか地獄とかネガティヴな要素があるんじゃなくて、そこに辿り着いたら、希望であり光であり、何かが見えてくるということ。だからみんな、思考が深いところに行くし、それは落ちていきたいわけではなくて、その先が見たいんだよね。そのイメージでタイトルをつけました。
――いしばしさんは福島出身なんですよね。
実際に被害にあっている地区の出身だし、音楽活動ができないくらい落ち込んでいたんだけど、“歌うんじゃないの?できることあるでしょ?”というやりとりもしながら。
――深い。深いがいい言葉だ。
そう。深い先には苦しみがあるんじゃない、希望あるんだよ。それで最後に「Hope」という曲。震災の前に作ったんだけど、ちょうど繋がったんだよね。
――もともと海や北欧がテーマだったのは、何か理由があったんですか。
最初、いしばしさちこがフィンランドに旅行に行くことになって、“帰ってくるまでにフィンランドのイメージで1曲作っておくから、歌詞頼むよ”って「Havis Amanda」を作ったんだけど、その旅行が中止になったって言い出して(笑)。その前に作ってた「Topography of the White Sea」は俺の中で北の海のイメージだったから、必然と決まったよね。歌詞があがってきたら、海の歌だったから」
――イメージが共有できたんですね。
そう。最初は“Sea”だったんだけど、曲を作った段階でのイメージがあったから、“White Sea”って歌ってもらって、そのあたりから北欧を旅してみようというテーマになった。その頃はちょうど、北欧神話みたいな本も読んでいて。異文化が好きなんだよね。今までもテーマが、中近東のときもあったし、ローマとか。これを作ってるときは北欧がブームだったっていうだけだと思うんだけどね。


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